2021年振り返り

2021年が自分にとってどんなものだったのかという問いに答えるとすると、視野を広げるための年だったということになるだろう。

このブログを書くのも久々になってしまうからとりあえず近況を話しておくと、まず大学に関しては1年以上前から休学しており、去年の春から普通にプログラマとして働いている。 といっても完全に博士を諦めたわけではなくて、週4日を仕事に、残り1日を学業や個人開発にあてるというかなり変則的な毎日を過ごしている。

以下は技術とか学術を抜きにした個人的な振り返りについて

MT免許取得 + NDロードスター購入

まず大きく変わったなと思うのはマニュアル車の自動車免許を取得したことだ。

正直車の免許を取ることは自分の人生ではもうないと思っていた。しかしEV化の流れが急激に進んだことで、なんというかガソリンエンジンのMTスポーツカーという存在がとても自分のなかで魅力的に感じてしまい、この歳になって教習所に通うことになった。 車はロードスターか86にするか悩んだが、燃費や保険などのコスパが良いことと*1、せっかくならオープンカーに乗ってみるかということでNDロードスターにした。

結果としてはこの選択は大正解だったように思う。

オートマチック車でもパドルシフトのものもあるし、素人にとってはマニュアル車というのはシフトスピードでもエンストのリスクでも、合理的なメリットというのはほとんどない。でもその不合理さがむしろ魅力に感じられる。全身を使って操作するという感覚とミッションの自由さ、2シーターということもあって狭い車内、だがそこにロードスターという車のデザイン哲学が感じられるからだ。

村上春樹も実はMTのオープン2シーター乗りで似たようなことを言っていたので*2、そんなにハズしているわけではないと思っている。 サン=テグジュペリが人間の土地で描いていた、飛行機と同じような感性のものなのかもしれない。レガシーとしての車の魅力を感じられる時代に生きているというのも贅沢なことなんだろう。

というわけでロードスターには満足しているが、つい先日後輩のテスラモデル3に乗る機会があって、そのときに衝撃を受けた(次の車はテスラになるかもしれないと思うほどに)。色々とテスラについては思うことがあるので別途ブログにする予定だ。

f:id:atria:20211231165307p:plain
筆者のNDロードスター in 真鶴

賃貸不動産経営管理

人生の三大出費の1つに住宅費用がある。

今まで賃貸住宅のお世話になってきたわけだが、マンションや家について自分はあまりに無知じゃないかと思ったので、この機会に不動産系の資格を何かとってみたくなった(ちなみに本業とは全く関係がない)。 宅建は大変そうだったのでもっと軽いものがないかと探していたところ、今年から国家資格化された賃貸不動産経営管理士に行き着いた。

宅建は不動産の取引に関する資格だが、賃貸不動産経営管理士はその名の通り不動産管理業に関する資格である。試験内容はわりと実用的なものが多くて、賃貸物件の管理に関する法律関係の知識やマンション構造や設備、税金に関するものなど幅広い(一番役に立ちそうなのは民法と税金関連のところだったかもしれない)。

毎年11月下旬に試験があって自己採点では40/50点だった。巷の合格点予想は36~37点くらいのようなので、たぶん受かっているのではないかと思う。

今年読んでよかった本

今年も結構な量の本を読んだが役に立ったり面白かったものとなると以下の2つ。

 インデックス投資のバイブルとも呼べる本。批判するにせよ手法を受け入れるにしろ、とりあえず資産運用を始めるにあたって読んでおくに越したことはない。個人的に投資(もしくはギャンブル)というのは勝つよりもいかに負けないかという視点が大事だと思っているので参考になったかなと。

  • Humankind 希望の歴史

 ユヴァル・ノア・ハラリが帯の推薦文を書いていたので目に止まって買った本。人間の性悪説へのバイアスを一つ一つ事例を紹介しながら解いていく内容になっている。ジンバルドやミルグラムの実験についての批判やスティーブン・ピンカーのデータの取り扱いが恣意的という指摘もなるほどと思わされた。 全体を通して、ネガティヴな感情に支配されつつある昨今のSNSに陰鬱さを感じる身としては処方箋になっていて素晴らしい。

直近だとサンデルの実力も運のうちとか、スコットギャロウェイのGAFA+X本とかもいい本だと思う。 漫画だと寄生獣日出処の天子という名作を読めたのもよかった。

検索と自由、そしてインタフェース

推薦と検索という自分の2つの研究テーマについて最後に書いておこう。

マニュアル車に限らず自動車には電車と違って行ける場所の自由さがある。そしてその場所は自ら検索して見つける必要がある。電車はそうでなく決められた行き先を選択するだけだ。もちろん車でも行き先を決める際はガイドブックで決めることはあるだろうが、そこには圧倒的な選択の自由がある。

同じように推薦はアルゴリズムから選択肢を与えられるものだが、検索はひとが自ら見つけるという主体的かつ探索的な要素がある。推薦システムは究極的にはインタフェースがなくてもいいものだが、検索システムはインタフェースを必要とするだろう。

選択を決めること、いわば意志決定は人間にとってはコストである。だから楽な方向に行こうと思えば全てが自動的に決められていく未来もありうる。しかしマニュアル車に乗って思うのはそうではない楽しみがあることがわかる。ハンドルで生死が決まるという感覚があるからこそ、そこに魅力が感じられる。 ただこれはMTの2シータースポーツカーのように少数派の感性だ。あと10年ほどでテスラのようなEVと自動運転に大多数が置き換えられてしまうだろう。

しかし自らが操作しているという感覚にひとが価値を感じる限り、そうでない車もインタフェースも残り続けるのではないだろうか。

来年

意味のないようにみえることが実は意味があるという信条のもとで過ごしてみたい。敢えて違う場所にいったり人と会ったり、アウトプットでブログを書いてみたり。効率さを超えた先に楽しさはあるかもしれない。

*1:実はロードスターは街乗りでもリッター15くらい出る。車両保険や任意保険も他のスポーツカーと比べると結構安い

*2:村上春樹マニュアル車の魅力を語る「それは、マニュアル主義者にしか理解できないものです」 https://news.yahoo.co.jp/articles/71157e06f23eae704ff6e1753c4d12363b625dd5