気分良く働ける場所に住む

最近メンタルの調子が良いというか気分良く仕事ができている。なぜなのかその理由を考えてみた。

オフィスの近くに住んでみる

4月に大学を辞めることにしたので、仕事に集中するためにオフィスに歩いていける場所に住むことにした、きっかけとしてはこれが大きかったと思う。 リモートワーク全盛ということで去年の夏頃に海老名市に引っ越していたのだが、元々海老名に引っ越したのは貯金のために一番大きな固定費である家賃を削ることが目的だった。

そして目的通りお金は溜まったが、なんというか仕事のパフォーマンスがどんどん落ちていく感覚があった(それがなぜかはわからなかった)。 プログラマということもあってリモートワークそれ自体に支障はなかったと思う。運動はしていたし、飯も基本的に自炊していたし、休日は車で外出して箱根とか熱海とか行きたいところに行っていたので不満はなかった。 肉体的には非常に健康的な生活を送っていたと思う。しかしなぜか仕事のパフォーマンスは落ちていた。とはいえオフィスは結構遠くて、帰宅ラッシュの中帰るのはつらいので中々できていなかった。

横浜に戻った結果、結論として自分の場合仕事はオフィスでやるべきということがわかった。 個人的に

オフィス + 徒歩圏>>> リモートワーク >> オフィス + 満員電車通勤

くらいな感じがある。

こういう家よりもオフィスで仕事をする方が捗ることと似た状況として、大学受験の頃を思い出す。 自分は予備校へは家庭の事情で行けなかったので宅浪をすることになったのだが、当時は正直孤独とプレッシャーで頭がおかしくなりそうだった。 その中でなんとか図書館を使ってやりくりしていたが、運良く大学に入学できた後に、自習室や友人など他者の存在は自分にとって必要なものだったと痛感した。

効率性を考えるのであれば、移動時間を考えなくて良い家の方が勉強にしても仕事にしても良いことになる。でもやはり他者の存在は不可欠なんだと思う。知らない他者でも、誰かとともに同じ作業を自習室で共有することとか、昼食や空き時間に誰かと話すことを通して、理由は不明だが精神的に良い影響があって、それが仕事や勉強に良い影響を与える。

ここから推論するに自宅と自習室が変わらないタイプならリモートワーク向きだと思うが、そうではないひともいるということかもしれない。

あとはそれなりに良いマンションにしたので防音性が高かったり、部屋の品質が高い(水道水が不味くないとか、換気設備の音がうるさくないとか)ことがメンタルに良い影響を与えてるんだと思う。

パフォーマンスは非線形だが、家賃は線形

僕の印象として富裕層というのはいわゆる高級住宅地とか都心部に住んでいる感覚がある。つまり家に金をかけているということだ。 これはお金があるからその余裕の対価として家に金を掛けるようになったと思っていたのだが、実は逆なのかもしれないと思い始めた。 つまり家にお金をかけたから金を稼げるようになったということだ。

自分が仮説として考えているのは以下のような2種類の構造である。

コストに対するリターンは線形的に良くなるパターンと非線形的に良くなるパターンがあって、家というのは立地と専有面積の掛け算で決まるので線形的に良くなるが、人間のパフォーマンスは非線形的になっていくのでないかと思っている。

例えば倍くらい大きな家に住んだらだいたい家賃は2倍になるが、2倍優秀なプログラマを雇おうと思ったら4倍くらい払わないとダメだろう。超優秀なひとを望むなら10倍くらい必要になるかもしれない。 人材の希少性から、仕事のパフォーマンスに対するリターンは非線形なカーブを描く。だからある一定の水準を超えると家<<収入になるのだと思う。

つまり家に金をかけることが浪費になるか投資になるかは仕事のパフォーマンスのフェーズが図のグラフのどの辺りにあるかどうかで答えが変わるため、どちらが正しいというわけではないということだ。新卒とかで豪邸に住むのは浪費だと思うが(上記の図でいうと重なってる点の左側)、それなりのポジションにあってパフォーマンスを得られるならそれは投資になる。

高級住宅地なら住み心地、都心に住むなら通勤時間の短縮で余計なストレスを回避し、パフォーマンスを上げることで費用分を回収している。むしろそれ以上のリターンを得ているのだと考えられる。

ちなみにこのままだと思いつきを書いてるだけだから少しファクトを出すと、「通勤者バイアス(commuter's bias)」というものがある*1*2。 これは通勤時間が増えることの影響を過小評価してしまうというバイアスで、要は通勤時間と家賃だと家賃を優先してしまうが、基本的には節約した家賃以上にパフォーマンスが落ちてしまうので結局損をしているという話だ。

イギリスの研究によると、1日の通勤時間が20分増えることで、仕事の満足度は給料が19%減るのと同程度の悪影響を受ける。

単純計算すると年収が500万なら500*0.2/12=8.3万の影響になるが、20分遠くに住んで8万も家賃が下がるケースはかなりレアだろう。 まあこれは海外の事例だしリモートワーク時代なのでそのまま適用するのは無理があるかもしれないが、バイアスがあるというのは意識しておいても良いはずだ。

メンタルを無視しない。気分良く働く

リモートワーク時代において、家や立地が仕事のパフォーマンスの何に影響するのかと言われると難しい。 一方運動は身体の維持やリフレッシュで重要なわけだし、目に見えるところでいうとお金を貯めるというのはFIREとか関係なく意味があることはわかる。

しかし同時に目に見えないメンタルのケアやリフレッシュも重要で、それは長い目でみたときに仕事のパフォーマンスに効いてくる。住むところ妥協してメンタルを犠牲にするとパフォーマンスは落ちて、それは長い目でみればマイナスにしかならない。家のコストは比例的だが人間のパフォーマンスは指数関数的なのでパフォーマンスが重要なら関係ある分野へのコストはどんどんかけていくべきということだ。*3

今自分が住んでいる場所は山下公園や中華街とかが近いのもあり、海辺でリフレッシュしたり美味しいものも豊富なので満足できている。

というわけでリモートにしてもなんにしても気分良く働ける環境や住める環境を整備することは大事だし、あまり固定観念に囚われることなくそれは追い求めていきたい。わかりやすい効率性や利便性が全てではないなと。 お金を貯めることに夢中になって目に見える物理的なものを重視しすぎて、目に見えない精神的な部分をすり減らしていないかは気をつけて行きたいなと思っている。

補足: この記事はリモートワークに反対とか、オフィスに近くに住めと主張しているわけではない。 筆者の職場には登山が趣味ということで長野県に引っ越したひとがいるが、それはそのひとにとってメンタルや気分に良い影響を与えるわけだし、むしろとても好ましいことである。自分にとって何がメンタルに良いのかは人それぞれなのでそれを最大化すればよいという話です。

*1:通勤時間が20分増えると危険な結果に —— その対処法とは? | Business Insider Japan

*2:バイアスについて直接述べられている記事はこちら Reclaim Your Commute

*3:増井さん曰くシリコンバレーはとても住みやすいところで、またAppleのエンジニアは一人一つ個室を持っていて働く環境としては良かったらしい。