ytanaka's blog

ロジカルに、ときにラジカルに。

ドワンゴを退職しました

2019/2/28をもって株式会社ドワンゴを退職しました。

ドワンゴにエンジニアとして新卒入社して今年で約4年になります*1。色々と注目度の高い会社で様々な経験をさせてもらいました。ここでは備忘録の役割も込めて、何をやってきたか・どんなこと感じたかを書いていきたいと思います。

何をやってきたか

初年度はドワンゴの教育事業であるN予備校の企画開発とAndroidアプリの開発、2年目以降はN予備校やniconareといった新規サービスのインフラ構築やSREを担当していました。AndroidからSREに転向したのは一度フロントエンドから離れたところで経験を積んでみたかったというのがあります(当時人数が少なくて大変そうだったというのもある)。

結果的にネットワークなどの基礎的な部分から負荷対策、例外やアクセスログ監視、オンコール対応、パフォーマンスの改善といった、今でいうところのSRE的なものの最先端を追うことができ、一歩離れた視点からアプリケーション開発を見直すことができました。特にDevOpsでいうところのOps部分を垣間見ることができたのは本当に良かったと思います。

直近はTerraformを使ってAWSのインフラを構築したり、既存のEC2で動いているアプリケーションをコンテナ化してCI/CDの改善を行ったりFargate上で動かして運用するといったことをやってました。全体的に大企業ならではの信頼性やアクセスログのトレーサビリティが要求されるところがあって、そのあたりはベンチャーでは身に着けることが難しい内容の経験を積めたと思います。

ドワンゴという会社について

多くの方がブログで言及されている通り、ドワンゴでは真の裁量労働が行われています。自分がとても恵まれた部署にいたからかもしれませんが、待遇や環境に関して不満はありませんでした。

サービスリリース前は忙しい時期ももちろんありましたが、基本的には昼頃出社して21時頃帰る生活で、ラッシュ時間を避けることができたため出社時は電車で座りながら本や論文を読んでいました。全体的にエンジニアが働く環境としてはかなり良いのではないかと思います。

超会議について

何かと話題になりがちなニコニコ超会議ですが、せっかくなので少しばかり触れておきましょう。

ニコニコ超会議について皆さんはどんな印象を抱くでしょうか。実を言うと自分は入社するまで超会議というものに参加したことがありませんでした。2009年頃からプレミアム会員で動画も生放送もほぼ毎日使っているヘビーユーザでしたが、リアルのイベントはどこか距離を感じていたためです(会場が物理的にも遠かったというのもある)。

もう4回ほどスタッフとして参加していますが超会議ほど参加してみないとその良さがわからないものもないんじゃないかと今では思っています。

確かに今年で8回目というのあって多少マンネリ化してきている部分もあるとは思いますが、去年なら超バーチャルYouTu"BAR"ブースはものすごい盛況でしたし、超コンパスブースのようなゲーム系のブースの盛り上がりが凄かったのを覚えています。去年の超会議の来場者数が過去最大だったのはニコニコの可能性を示しているともいえるでしょう*2。あと休憩時間に超歌舞伎を見たり、超ボカニコステージというのが個人的に毎年楽しみなので時間を見つけては参加していました。

もちろんなかなか重労働だし大変なところもあります。個人的に一番大変なのが始発で出発しないとスタッフ集合時間に間に合わないので朝5時には起きないといけないことでしょうか*3

去年は超クリエイターズLab.というブースでスタッフとして参加していました。「うp主ふれあいセンター」という投稿者同士で交流できる場所で、投稿者プロフィール帳を書いてもらったり自分の投稿した動画を流してもらうという企画をkoizukaさんと一緒にやっていました。客寄せからブース説明まで行う必要があったので(ちょっとした営業気分)なかなか大変でした。とはいえこのような仕事は志願制で、このような内容が嫌なら別なことをすることもできます。一昨年は超ニコラジというところで裏方をやったりしました。

投稿者とのコミュニケーションから

うp主ふれあいセンターという企画の性質上、動画投稿者の方とコミュニケーションすることができ、良い機会だったので雑談含みで色々と話を聞いていました。紹介される動画はカテゴリもジャンルもバラバラで、三年かけて一つの動画をつくった高校生くらいのひともいれば、スマホで撮った動画をスマホ上で編集して投稿するひともいました。全体的に年代層が若く、まだまだニコニコにも新しい投稿者のひとはいるし、自分の知らないジャンルがこんなにあるんだなあとあたらめて思ったのを覚えています。

最も印象に残っているのは日曜の夕方もう終わりに差し掛かったときのことで、とても良くできた動画の紹介が続いたとき、その場にいた見知らぬはずの投稿者同士で交流が始まったことです。その光景をみたとき僕は何か懐かしいものを感じました。

それは僕が20歳のときにニコ生で配信をしていたときの、名前も知らないツワモノたちがどこからともなく集まってきて、そのゲームについて熱い議論をするという言ってみればWeb2.0的な光景でした。最近すっかり自分が忘れていたインタレストグラフから生まれるコミュニケーションがそこにはありました。懐かしく思ったのは僕自身が過去にニコニコというプラットフォームで救われた人間だったというのもあるのかもしれません。

さて超会議で学んだのは、リアルイベントを通して量的な指標には現れにくいユーザの温度感やニーズを知ることはなんだかんだ今の時代でも重要ということです。

一見当たり前なことのように思えますが、このような質的なフィードバックを現場で捕まえにいくことを重視しているのがAWSだと思っていて、各国でやっているAWS Summitなどの場で彼らはきちんと企業の開発者のニーズを捉える努力をしています。ビジネスという面においてAWSGCPにはない強さを発揮していますが、この辺りの人間的な部分を重視した戦略がその成功要因として大きいのではないかと思っています。 

どうしても研究がやりたい

Menthas*4というニュース推薦システムを個人で開発していたというのもあって、情報検索や推薦システムの論文は卒業後もよく時間を見つけては読んでいました。そしてある日ふとCold-Start Collaborative FilteringというXiaoxue Zhao氏の博士論文*5を読んでとても感銘を受けてしまい、このことが博士課程進学への遠縁となりました。

またMenthasを作っていくうちに人間の可能性を広げるのは人間単体ではなく人間とアルゴリズムによるコラボレーションだと確信したことがあります。アルゴリズムが人間の視野を狭めるというフィルタバブルの問題は常に考え続けていましたが、アルゴリズムに頼らない情報収集という観点ではやはり限界があるし、結局はフィルタを超えて人間の能力を高めるという目標を持ったアルゴリズムを作れるかどうかなんじゃないかという結論に至りました。同様にインタフェースでも効率的ではあるが慣れない操作や見慣れていないアクションをどう受け入れるかという問題は残っていますし、まだまだ研究できる余地はあると思っています*6

というわけで次は最近流行りのGAFA..ではなく慶應SFCの増井先生の研究室に博士課程で進学します。この歳での進学はなかなかいばらの道ではありますが悔いのないように頑張ろうと思います。

最後にお世話になった皆様、本当に4年間ありがとうございました。

f:id:atria:20190304233119j:plain

またどこかで!

*1:正確には3年と11ヶ月なんですが。

*2:「ニコニコ超会議2018」リアル来場者数が過去最高の16万人超え! ネット来場者数も盛り返す - ねとらぼ

*3:もちろん近場に住んでいるひとはこの限りではありません

*4:https://menthas.com/

*5:多腕バンディット問題とMarkov Decision Processを組み合わせてコールドスタートな状態の推薦システムに対処するという内容。まだ完全に理解できてはいませんが素晴らしいです。

*6:例えば最近読んだものだと Supporting Novice to Expert Transitions in User Interfaces (https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2658850.2659796) 辺りの話。この辺の話については別の機会に書きます